朝の散歩(フジオのブログ)

日記、感想、創作など。

『サラ金の歴史』の感想

こんにちは。最近読んだ本の感想を書きます。

 

今回はこちら、
小島庸平 『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』
です。

www.chuko.co.jp

 

これまで運良くお世話になることはなかった消費者金融。でも決して「自分には関係ない」存在ではない気がして、それでいて「近寄っちゃダメ」なイメージでありつつ「なんか気になる」存在でもありました、私にとって。

 

そんな消費者金融の怖い側面はきっとたくさん紹介されていると思うんですけど、怖くて触れてこれていませんでした。(ウシジマくんとか怖くて読めないタイプ)。

 

で、こちらの新書も消費者金融について掘り下げた内容なんですが、恐ろしさや酷さだけを伝えるのではなく、もう少し引いた目線というか、日本経済とか文化背景などを絡めて語られているので、最後まで怯えずに読めました。(ちなみに、「そもそもサラ金ってなんだ?闇金と何が違うんだ??」レベルの知識で読み始めましたが、大丈夫でした…!理解度はともかく)。

 

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まず、サラ金の歴史が戦前から遡って紹介されています。お金の貸し借りとその利子の存在は大昔からあるようですが(そりゃそうか)、サラ金に直接関わってくる戦前から。”素人高利貸”なる存在とその人たちが活躍する当時の経済状況や価値観といった土壌。貸し借りはリスクがあるから、基本は身内で行われていた(確かにそうだ)。日本史の表面をさらっと撫でるだけでは見えてこない、苦しい生活を送っていた当時の人たちの状況の説明もありました。

 

質屋の存在も、時代設定がひと昔前のドラマや小説とかでは見かけますが、私はいまいち利用者の感覚とか「どうしてそのシステムが成り立つのか」がピンと来てませんでした。そんな質屋の基本や当時の利用者の感覚なども紹介されていて、「なるほど〜」となれたのも良かったです。

 

で、素人高利貸からのし上がった人が戦後に始めた”団地金融”。ここで身内ではなく他人にお金を貸すビジネスが盛り上がってくるんですね。私そもそも団地金融が何を指すかすら分かってなかったので、「なるほど〜!」ってなってました。

 

本筋からずれた感想なんですが、ビジネスでのし上がっていく人って、”社会の現状を把握する力”と、そこから予想した次の時代に向けて”ある程度のリスクを取る力”が凄いんだよなと改めて思いました。

 

団地金融やサラ金の有名企業の創始者の生い立ちもそれぞれ紹介されていて、それも面白いというか、その後の各企業の特徴とリンクしているというか、興味深かったです。

 

この団地金融〜サラ金の顧客のターゲット設定や貸すルールを、時代に合わせてどんどん変えているのがよく分かりました。もし自分が経営者だとしたら、1回何か成功したら絶対その方法にしがみつくと思うんですけど、この人たちはガンガン変えていけてるの、高度経済成長期とか関係なしに、素直に「強い〜」と思いました。

 

もちろん、高金利・過剰融資・過剰取り立てなどの暗い部分もしっかり書かれており、「倫理観が終わったら、何もかも終わり」と胸に刻みました。”感情労働”という概念も今回初めて知り、もっと知りたくなりました。

 

なんというか、サラ金の歴史を通して、戦前→戦後→高度経済成長期→バブル→平成の日本の経済状況や人々の心持ちを覗き見れた感覚です。

 

今後も消費者金融と関わらない人生を送れたらなと思いますが、それでもやっぱり全然無関係ではないし、社会で生きる上で無関心ではいられないというか、見えている風景をペラリと1枚めくってみると絶対”ある”存在なんだなと実感しました。

 

また薄っぺらい感想な上に間違った理解をしているかもですが、とにかく面白かったです。

 

おしまい。