朝の散歩(フジオのブログ)

日記、感想、創作など。

『猫を抱いて象と泳ぐ』読んでる時間が心地よい

こんにちは。

 

最近読んだ本の感想など書きます。

 

読んだのは、

 

小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』

 

です。

 

www.bunshun.co.jp

 

個人的に文芸書って、先が気になってどんどん読み進めたくなるタイプのものと、読んでる時間そのものが心地良いからゆっくり向き合いたくなるタイプがあるんですが、この作品はガッツリ後者でした。

 

あらすじは、後にチェスのプロ(ちょっと特殊)になる主人公の、幼少期から青年期までの物語といった感じです。(詳細が気になる方はあらすじを検索してみてくださいね)。

 

 

読み心地は、不穏で、生々しくて、痛々しくて、悲しくて、

 

でも、穏やかで、優しくて、温かい。

 

幸せな読書体験ができたなと思います。

 

あと、物語の舞台がどこもおしゃれに感じました。フランス映画みたい。(フランス映画のことよく知らないくせに書いちゃった。)生活できるようにリノベした廃車の回送バスやら、廃プール場を再利用した地下のチェスクラブやら、牧場を再開発した老人ホームやら。

 

ちょっと寓話の世界みたいな奇妙さが好きでした。

 

登場人物も良い人過ぎたり個性的過ぎたりと、どこか現実離れしていて感情移入はしなかったんですが、その分「素敵だな、こんな風になれたらな、憧れるな」という優しい気持ちになれました。

 

主人公は自分自身や大切な人の体が大きくなることを極度に恐れる人物なんですが、あのラストはどう捉えてよいものかしら…と、想像が膨らみます。他の作中の様々な箇所も好きに解釈して良い余白のある表現が多く、他の人の読んだ感想を見るのも楽しめそうです。

 

これまで小川さん作品を2冊くらいしか読んだことがありませんでしたが、今回この『猫を抱いて象と泳ぐ』を読んで、一気に好きになってしまいました!もっと他の作品も読んでみたいです。しかも小川さんはすごく沢山の作品を発表されているようなので、今後の楽しみが一気に増えてラッキーな気分です。

 

 

余談ですが、違う作家さんですけど、個人的に割とよく読んでいる方の梨木香歩さん作品も、読んでいる時間自体が心地良いという共通点から、何度か存在が頭をよぎりました。似ているけど、違う。春風と秋風はどちらも心地良いけど別物、みたいな。

 

 

おしまい