最近読んだ本の感想を書く回。
今回はこちら
辻村深月『傲慢と善良』
です。
※以下、内容のあらすじや、鋭い感想・深い考察などはありませんが、ネタバレはあるので未読の方はご注意ください。
結構前から様々な評判を見聞きして読みたいと思っていていて、先日やっと読むことができました〜。
本を実際に手にしたときは「あ、結構分厚い、読めるかな…。」とビビっていましたが、実際読み始めると、24時間以内に最後のページまでいけました。本を最後まで読むにあたり、内容が面白ければ、本の厚みは何の関係もないことを改めて思い知りました。
ざっくりいうと婚活&婚約中の30代男女の話だと思うんですが、物語を通して2人とも成長していくので読後はさわやかでした。
そう、30代の成長譚。精神的に幼い30代が、それでもアクションを起こし、苦しみから解放されていく展開に個人的に救われました。
成長譚の主人公の年齢って(小説でも漫画でも映画でもゲームでも何でも)、10代かせいぜいで20代前半の設定が多くないですか…?私はここ10年くらいこの手の物語を見ると「こんなに若いのにみんなしっかりしてる…。」とフィクションのキャラクターにも劣等感を抱いていました。
現実の自分が未熟すぎて。
それがこの『傲慢と善良』の主人公の一人、真実(マミ)は自分と同じ30代かつ精神的に未熟。未熟の方向性も似てることもあって、共感できる部分がかなりありました。
共感できるということは、それだけ読んできるとグサグサくる描写も沢山あるということで。マミの考え方や挙動の情けない様子、マミに対する周囲の様々な角度からの厳しい評価に、内心何度も叫んでしまいました。
個人的にこのマミさんに特に共感してしまったのが、母親が過保護&固定観念が強い&子の意思を尊重しない(尊重するという概念がない)、みたいなタイプというところでした。決して悪い親ではないけど、この親の言うこと聞いていたら、そりゃ自分で物事を決められない人間になってしまうよな、と。
子どもの頃から賢かったり我が強かったりすれば、そんな親とも渡り合っていけたかもしれないけど、そんな賢くなくて平和主義な性格(善良)だったら、とりあえず自分の面倒をみてくれる親に従おうってなるのも分かる…。
でも、ある程度の年齢になってしまうと、親や誰かの言うことを聞いていても、人生の途中で手詰まりのタイミングが訪れる(それがこの物語では結婚に至るステップとして表れる)。
その時から自分で判断してやろうとしても、圧倒的に経験不足で全然うまくできない。
辛い!
自分自身がまさしくそのタイプだし、自分以外にもマミと似た側面を持つ人はいっぱいいるように思います。マミさんの存在と動向が人ごとではなく、急いでページをめくって結末を見届けようとしていました。
つい、マミさんの未熟さへの共感についてばかり書きましたが、他にも婚活中の心理あるあるや、地方都市で独身であることのヒリヒリ感(大型ショッピングモールの描写…)など、胸をえぐられる内容がたくさんですごく印象に残りました。
楽しい読書体験をありがとうございました。
おしまい。