ポインミー2本目です。
今日は雨が降ったり止んだりする曇り空で、すこし肌寒いです。
ポインミーは朝から台所に立って、何かを作っています。
薄い食パンの耳部分を切って、バターとからしを混ぜたものを薄く塗って、トマトを薄切りにして、それを食パンに乗せて・・。
どうやらサンドイッチを作っているようです。
台所での作業が終わると、サササとあれこれ準備して、タタタと出かけていきました。
今日は友だちのピッピと半年ぶりに会う日。
「次はサンドイッチを用意して、海辺のエトワール広場で」と、前回会ったときにふたりで約束していたのです。
海辺のエトワール広場は、名前の通り湾岸沿いにある大きくて眺めの良い憩いの場で、美しい帆船エトワール号が停泊していることから、その名で呼ばれるようになりました。
ポインミーの住む町からは少し遠くにあるので、今日は電車で移動します。
電車に揺られている間も、久しぶりに会える友人のことを思い、ポインミーはそわそわしていました。
「ピッピは半年間元気にしていたかな」
「サンドイッチ、量は足りるかな」
そんなことを考えている間に電車は港町の駅に到着。
ポインミーは車両を降りて改札を抜けると、海の貴婦人広場まで歩き出しました。
広場の入り口近くまで行くと、反対側から同じように入り口に向かっている誰かが見えます。
ピッピです。
「やあ、ポインミー。」ピッピはあいさつしました。
「ピッピ、久しぶり。こんな天気になるなんてね!」ポインミーもそう返し、ふたりして笑い合いました。
半年前のふたりは、青い空と青い海を見ながらサンドイッチを食べるつもりで、計画を立てていたのです。
「でも会えてうれしいよ」ピッピは言いました。
それから二人はさっそくお昼ごはんを食べる場所を探し始めました。
せっかくだから海と空がよく見える屋外で食べよう。
でも雨に降られても大丈夫なように屋根のある場所がいいね、なんて話しながら。
少し歩いてみると、ちょうどベンチとテーブルの上に屋根のある場所を見つけたので、ふたりはそこで用意したサンドイッチを広げました。
ポインミーは
・トマトとベーコンとサラダ菜
・ニンジンラペ
ピッピは
・キュウリとチーズ
・ゆでたまごとハム
を挟んだサンドイッチを持ってきていました。
遠くを眺めると白色と灰色の空と海がどこまでもどこまでも続いていましたが、目の前のテーブルの上はなんともあざやかで、にぎやかです。
ふたりは半分こしながら、4種類のサンドイッチをむしゃむしゃ食べました。
みずみずしいトマトの甘みと酸味・カリカリに焼いたベーコン・ほのかなサラダ菜の苦みの組み合わせは大成功でした。
汁気をしっかり絞ってからパンに挟んだニンジンラペも食べ応え十分です。隠し味の薄切りタマネギが良いアクセントになっています。
キュウリとチーズのシンプルな組み合わせは期待通りのおいしさで、パンに塗ってあるからしマヨネーズもふたつともの食材の味を引き立てていました。
ゆでたまごとハムもふたりとも大好き。いくらでもおかわりができそうです。
また、ポインミーは他にコンソメスープも持ってきていたので、サンドイッチと一緒にふたりで飲みました。飲む直前に、ポインミーはこのスープに余ったパンの耳を小さく切って油であげたものを浮かべました。
サンドイッチを食べながら、スープを飲みながら、ふたりはこの半年にあった出来事や思ったことをそれぞれ語り合いました。
あたりは徐々に霧も出てきましたが、食事とおしゃべりに夢中のふたりはおかまいなしです。
ポインミーは、ピッピが自分の話を楽しそうに聞いてくれるのが嬉しかったですし、ピッピの話を聞くのも楽しくて、時間が過ぎている感覚が全くありませんでした。
また、自分の作ったサンドイッチをおいしいと言ってもらえたのも、ピッピが作ったおいしいサンドイッチを食べられることも、とても幸せでした。
サンドイッチを全て食べ終わったタイミングで、ピッピは自分のかばんから大きな水筒を出しました。中には熱々のコーヒーが入っています。
「ランチタイムの後はコーヒータイムと行こうよ。あと、甘いカリカリもいかがでしょう?」
と言って、ピッピもサンドイッチの耳をあげたものをかばんから取り出しました。こちらはパンの耳を揚げたものに砂糖やココアパウダーがまぶしてあります。
コーヒーは温かく、さっぱりと飲みやすく、香りと湯気でポインミーたちを包みました。
さっきまであんなにおしゃべりをしていたのに、ふたりとも今は黙っています。この時間を味わっているのです。
気がつくと霧がずいぶんと立ちこめていました。
すてきな公園だけど、今日はあいにくの天気なので周りに他のひとは全然いません。
この白色と灰色の世界には自分とピッピしかいないみたいに思えます。
この風景がきれいなような、寂しいような。
今の状況が嬉しいような、心細いような。
ポインミーは不思議な気持ちになりました。
でも手に持ったコップの中の黒くて温かいコーヒーや、自分のそばにいるピッピを眺めていると、やっぱり幸せな時間だなと思えました。
そしてもうしばらくコーヒーとこの状況を味わうことにしました。
少し霧が薄まったタイミングで、ポインミーはふたたび口を開きます。
「コーヒーすごくおいしいね、おかわりあるかな?」
「もちろん」
ピッピも嬉しそうに答えます。それからふたりはおしゃべりを再開し、コーヒーのおかわりをしながら、笑ったり感心したり楽しく過ごしました。
そしてコーヒーと甘いカリカリがなくなったころ、霧もすっかり消え去って、集まりはお開きとなりました。
また今度会う約束しているから寂しくありません。
この夏にふたりとも興味のある展覧会が美術館で開催されるから見に行こうと、さっき話が出ていたのです。
ふたりはもう一度日付と場所を確認してから、さよならしました。
帰りの電車で、ポインミーはさっきまでピッピと話していた内容を思い出し、ひとりでニコニコしたりクスクス思い出し笑いをしたりしながら過ごしていました。
家に着いて晩ご飯やシャワー、おでかけの後片付けを済ませる間も、帰り道と同じです。
ピッピと過ごした時間や風景ばかり思い返していました。
ポインミーはピッピが大好きなのです。
最後に今日の日記を手帳に書いて満足してから、ポインミーは眠りにつきました。
久しぶりにお友だちに会えて良かったね、ポインミー。
おしまい