よく晴れた暑い日。
ポインミーは午前中、おうちの掃除や洗濯をがんばりました。
部屋がきれいになって、気持ちも晴れやかです。
お昼にはドムおじさんからもらったトマトをサイコロの大きさに切ったものと、こまかく刻んだニンニク、庭で育てたバジル、たっぷりのオリーブオイルを使ったスパゲッティを作り、もりもり食べました。
味付けは塩だけだけど、最初の一口から最後の一口までずっとおいしくて、ポインミーは幸せです。
さて、お昼ごはんを食べ終わって一息ついたあと、ポインミーは麦茶を入れた水筒や、本棚から取り出した何冊かの本をかばんにつめこみだしました。
そして、お気に入りの麦わら帽子をかぶると、でかけていきました。
外に出て見上げると、空は怖いくらい深い青色で、雲は乗っかれそうなくらいモコモコです。
太陽はポインミーを容赦なく照らしてきます。
からだからジリジリと焼ける音が聞こえてきそうです。
自分の横にできた濃い影も、今にも勝手に動き出しそうなほどくっきりしています。
そんな強い日差しの中でも、誰かのお庭でピンク色のサルスベリが鮮やかに咲いているのを見ると、ポインミーはなんだか元気をもらえました。
また、そこら中でけたたましく鳴り響くセミの声も、ポインミーの気持ちを盛り上げてくれます。
ポインミーは夏の雰囲気が好きなのです。
でも、暑いものは暑いので、立ち止まることなく目的地に向かいました。
たどり着いたのは町の中心にあるポラリス。
ここはコンサート会場や、絵の展示場、音楽練習場、踊り練習場、茶室、話し合い部屋などがある文化施設です。
図書館もあります。
そう、ポインミーは今日、この図書館で午後の時間を過ごそうと決めていました。
ポラリスにあるいくつかの出入り口のうち、図書館に一番近いものは他より少し地味です。
そこから建物の中へ一歩足を踏み入れると、カーブした白く頑丈な壁と木の柱がセミの声を寄せ付けず、ひっそり静まりかえっています。
床のカーペットも、ポインミーの足音を奪いました。
静かで、窓がないから薄暗くて。
その上、不思議な匂いもして。
町の真ん中にある建物なのに、ここへ来るとポインミーはいつも別の世界に迷い込んだ気持ちになります。
目が室内の暗さに慣れてきたら、小さな緑色のランプに照らされたねじれ階段を上っていきます。
図書館は2階にあるのです。
階段を上りきったところで一度、持ってきた麦茶をグビリと飲んで、ポインミーは通路の一番奥にある木の扉を押し開けました。
そこはポインミーの大好きな図書館です。
静かで不思議な匂いがするのは通路と変わりません。でも、図書館の壁には窓があり、空間全体が優しい光に満ちています。(もちろん、本に直接日光が当たらないように設計されています)
そして涼しい!ポインミーのおうちは扇風機しかありませんが、図書館はエアコンがついています。
外を歩いてきたときの暑さと比べるとここは天国です。
ポインミーは麦わら帽子と荷物をロッカーにしまうと、借りていた本を持ってカウンターに向かいました。
「こんにちは。この本たち、返却します。」
ポインミーは司書さんに元気に、でもいつもより少し小さな声で言いました。
「こんにちは、確認しますね。はい、ご利用ありがとうございました。」
ポインミーの返した本を簡単にチェックしてから、司書さんも笑顔で返事をしました。
無事、借りていた本を返せたところで、さて今日はどんな本を読もうかな。
ポインミーはぽいんぽいんと、わくわくを隠せない足取りで図書館の奥へと進んでいきました。
たくさん並んだ本棚と、その本棚の中で静かにたたずんでいる本たちの背表紙を眺めながら歩いているだけで、キラキラした気持ちと安らぎの両方を同時に感じるのです。
ポインミーは物語の本も、絵や写真のたくさんある本も、文字だけで知らない世界を教えてくれる本も、誰かの日記みたいな本も、とにかくいろんな本が好きでした。
今日はどんな本があるかな。
毎月2回図書館に来ているのに、不思議と毎回新しい本との出会いがあります。
その日によって気分が変わるように、その日によって目にとまる本が変わるのです。
借りられるのは5冊2週間まで。
自分の読書にあてられる時間や読むスピードなども考えながら、ポインミーはじっくり本を選んでいきます。
今日は海の生き物についての本を何か借りたいな。新しい作家さんの本も読んでみたいし。モモバヤシ先生の紀行文も・・・。
いろいろな本を試し読みしながら過ごしていると、あっという間に数時間が経っていて、毎回ビックリします。
ポインミーは決めた本をカウンターで借りて、図書館を去りました。
建物を出るとポラリスの広場に、飲み物の移動販売車が止まっています。
ちょうど持ってきた麦茶もなくなって、喉が渇いていたところ…。
ポインミーはレモネードを買いました。
そうだ、ポラリスは3階にベランダがあったね、せっかくだからそこで飲もう。
ポインミーは再び建物の中に入り、またねじれ階段を上りました。
もう夕方ちかくになっていたこともあり、図書館に向かうときと比べると、ずいぶん日差しは落ち着いてきました。
数時間のエアコンで少し冷えたからだにはちょうど良い暑さでした。
ポインミーはベランダの陰になっているところに腰を下ろすと、そのままレモネードを飲みました。
透明なしゅわしゅわの中に沈んだレモンが涼しげ。
ストローで吸い上げた甘酸っぱい炭酸がのどを通っていくのがなんともさわやかです。
なまぬるい風に吹かれながらポインミーは空を見上げました。
昼間より青色が優しくなって、水色も増えて、紺色も増えて、雲もオレンジやピンク、紫色になって・・・。
刻一刻と様子の変わる空があまりにもきれいで、ポインミーはうっとりと眺め続けました。
そして、レモネードを飲みきったタイミングで、家に帰ることにしました。
帰ってすぐにごはんを食べたいところでしたが、まずはシャワーから。
日中にかいた汗を流してすっきりして、シャンとした気持ちになりました。
それから改めて夕ご飯を作り、食べて、ひと休みしてと、ポインミーはご機嫌に過ごしました。
夜風と扇風機にあたりながら、ポインミーは今日の日記を書きます。
あとはこれから眠くなるまで、今日借りた本を好きなだけ読むだけ!
ポインミーは眠りこける直前まで読書を楽しみ、それから幸せな気持ちで眠りにつきました。
今日も最高の1日だったね、ポインミー。
おしまい。