朝の散歩(フジオのブログ)

日記、感想、創作など。

『ワイルド・ソウル』面白かったです。

読んだ本の感想です。今回は、こちら。

 

垣根涼介『ワイルド・ソウル』

 

www.shinchosha.co.jp

 

あらすじは、上記サイトや他サイトでもわかりやすく・面白く・正確に書かれているので、気になる方は見てみてください。

 

個人的にとても面白かったです!事実を基にしたフィクションなのですが、事実が基になっている迫力というか、内容に引き込まれました。でもただ重たいのではなく、エンタメ感も満載で、文庫本で上下巻のボリュームでしたが、全然をそれを感じませんでした。

 

「戦後、日本では増え過ぎた国民をどうにかしようと、政策としてブラジルへの移住を勧めていた」。お恥ずかしながらこの小説と出会うまで、私はこの事実すら知らなかったんです。そしてその実態が酷すぎる…(詳細は省きます)。この政策に乗った人の大半はどれほど無念な思いで世を去ったんだろうと胸が痛みました。

 

全ての政策をうまくやるなんて、それは無理な話ですが、あまりにも心無い仕打ちだと、復讐する人が出てきてもおかしくありませんね。そう、話は後半から主に復讐劇な展開になっていきますが、殺したりとかそういうのではないんです。ただ、相手から謝罪を求めるだけなんです。

 

この謝罪を要求される相手たちも、極悪人ではないというか、これくらいの”悪事”を働く人の悪者感って、例えば職場に10人の人間がいたら1〜2人は該当するんじゃない?くらいのイメージです。日常的に嘘をつくことに罪悪感を抱かない人や、やっている業務がちょっとやばい気がするけど、自分は悪くないと思い込む人。(…上に命令されたから仕方ない、収入のために仕方ない、面倒ごとが増えるから仕方ない(周りに迷惑がかかる))。他人やエンドユーザーがそれで被害を被ることが想像できないか、どうでも良いと思っている人たち。普通に日常に溢れかえっていると思います。大きな被害が出ない場合は、そういう判断が正しいとされることもあります。

 

自分にも思い当たる部分があるからか、この断罪される人たちが妙にリアルに感じられて、ドキドキしました。

 

あと、現代日本少子化で困っているのに、戦後は人数が多すぎて困っていた…、人口って難しいなと思いました。そして国からみると今も昔も一人ひとりの命なんてものはどうでもよくて、”人口”という数字でしか捉えられてなさそうだなって思いました。管理する側からしたらそうなっちゃうか〜!  …。

 

…感想がなんだか暗い感じになってしまいましたが、登場人物がカッコよかったり、南米の雰囲気が味わえたり、大胆な復讐計画が成功するかドキドキしたりと、普通にエンタメ小説としてすごく面白いです!社会派な感じとエンタメ感がドッキングされている「こりゃいろんな賞を受賞しまくっているのも納得です!」な作品でした。

 

おしまい。